親が精神的な問題を抱える子どもたちは、親の精神的な支えとなると先述しました。
私は彼ら彼女らを、メンタルケアラーと呼びたいと思います。
メンタルケアラーは、
親の精神的な支えとなり、メンタル面のケアを担います。
四六時中親を心配し、親の声に耳を傾け、親の痛みを分かち、親を励ましてと、まるで、プロの看護職のように親をケアします。
でもそれは、
親から適切に心配されたり、応援されたり、心の痛みを背負ってくれたりされていないってことでもあるのです。
看護師さんが患者さんからケアを受けるってことは原則ないのと一緒です。
メンタルケアラーは自分がケアする立場なので、親から適切なケアを受けられません。
でも、子どもって、そもそもは親から気遣われる存在なんです。
そして、周囲からも気遣われる存在なんです。
この2つを私たちは絶対に忘れてはなりません。
ところが、ケアをするのが家族の役目とされている日本では、親のためにケアする子どもは偉い! かっこいい! と周囲から賞賛されます。
そのため、周囲の大人たちからは、あそこの家は問題なし! よくやっている! と、認識されがちです。
そうして、子どもたちのケアされないこと・ケアの欠乏は見過ごされます。
こうして、気遣われることなく気遣う人であるメンタルケアラーが大人になると、ケアされなかったことからくるいろいろな問題を抱えます。
適切なケアを受けていないメンタルケアラーは、生活面のスキルや、情緒的な成長が不足します。
親から向けられる日常の細々した心配りや、情緒的な交流が不足しているからです。
なのにそれらは、社会に出て、生きづらさとして実感され、その原因は自分がポンコツのせいだと認識されしがちです。
自分では、どうすることもできない境遇のせいなのに、自分のいたらなさのせいだと思っている。
精神的な問題を抱える親に育てられる子ども、かつてそんな子どもだったメンタルケアラーは、社会からまだあまり注目されていません。
社会が早く気づいて、不足したケアを補う施策が始まることが望まれます。