これは、私のお師匠さんの本で、心理療法のTransactional Analysis(TAや交流分析と呼ばれています)との関わりを中心に、お師匠さんの人生のすべてを語り尽くした一冊です。
お師匠さんの知らない面がたくさんあって驚きもするのですが、反骨気味の人柄がとてもよく伝わってきて懐かしい思いで読みました。
その中で、印象に残ったことを1つ、つづります。
ネガティブケイパビリティについてのくだりです。
カウンセリングや心理療法は、相談に来た人の問題が解決して楽になることを目指しますが、現実的にはいろいろなことがままならない世の中なので、どうしても問題が解決しないことも少なくありません。
そんなときは、相談に来た人はストレスを抱えたまま日々を暮らしていかねばならなくなります。
解決しない問題を抱えたまま、スッキリしない思いのまま、喜び、悲しみ、人と出会い、別れを惜しみ、新しい発見に目を輝かせ、悔しい気持ちや感謝の気持ちを持ちながら、生きるのですね。
このスッキリしない苦しみを抱える力がネガティブケイパビリティらしいのです。
本には、セラピストこそネガティブケイパビリティが必要なんだとありました。
セラピストは、問題解決だけではなく、苦しみの中で生きる人の心を支えること、その人を包み込むことも役目なので、セラピストこそネガティブケイパビリティが必要なんだよとの後進に向けてのメッセージ(ほぼ叱咤)なのですね。
※セラピストの腹構えに厳しいお師匠さんらしいメッセージです。
でも、反抗的な弟子の私は、ひろく人々へのメッセージと受け止めました。
ネガティブケイパビリティは、
いわゆる我慢とか、忍耐とか、重圧、抑圧に耐えるという意味じゃなくて、思い通りにいかないときの怒りや悲しみや憎しみ恐さなどのネガティブな感情をそのまま抱えつつ、穏やかに日々を暮らす能力みたいに思えるからです。
あるがままをそのまま引き受けて生きる。
それは、お師匠さんが心がけていたこと。
そして、人生を豊かに生きるコツのように思います。
お師匠さん、ありがとう。