うちだのつづり

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元死刑囚のトラウマと自分のトラウマと 2

永山則夫 封印された鑑定記録』(堀川恵子 岩波書店)の読書感想文の第2回、”トラウマ症状 脅威の高まりと妄想の巻”です。


さてこれらのことは、心理学的にはトラウマ性のストレス反応と解釈できます。
人は脅威に出合うと闘争か逃走のどちらかの反応を取りやすいのですが、この場合逃走の方ですね。安全確保のためにその場から移動するのです。

これについて永山は、「逃げてホッとする」や「解放感」という言葉を残しています。
私も同様に、離職や人間関係を終わらせるとホッとします。さみしさよりも安堵感を強く感じます。
きっと警戒による過覚醒が原因でしょう。永山も私も。

 

複雑性PTSDの症状で言えば”脅威の感覚の高まり”ですね。
四六時中不安や不審から警戒していて緊張感がハンパないのです。
逃走によってそれから解放されます。まさにLiberty!
こんなことから逃走癖がついてしまったようです。永山も私も。

 

過覚醒・過緊張状態は、これに加えて被害妄想も生み出します。それがきっかけで永山は犯罪に走ってしまいました。当時永山は精神科での通院治療が必要な状態だったようです。
私の場合はというと、不安障害確認型の状態になりがちです。施錠の転換を何度することか!

 

さて、こんな状態が何十年も続くので、疲労はたっぷり蓄積されます。たとい身体は布団に寝ていたとしても脳(妄想)が休まず動き続けるからです。永山が長らく布団で寝ることに憧れていたのは象徴的です。
そうして蓄積された疲労はさい疑心、被害妄想に拍車をかけます。悪循環です。

 

振り返れば私も相当怯えていました。全身が恐ろしさに包まれていました。
怖さが怖さを生み、いくつもいくつも身体に重くまとわりついてくるのです。
脅威の感覚の高まりです。

私の場合、運良くカウンセリングに出会いました。良識のある専門職やフツーの人たちにもたくさん出会いました。自助グループで痛みを分かち合える仲間も得ました。

数十年間たくさんの出会いをして、たくさん自分をケアして今ようやっと少しばかり安らげるようになりました。

 

一方永山は、重大な罪を犯してやっとトラウマに触れてもらえました。もっと前に罪を犯さずとも誰かに触れてもらえれば、心を寄せてもらえていればと思います。


さて、ヤングケアラー領域では”子どもが運に左右されずにすむ支援”が唱えられています。
永山は運に左右された子どもの一人に思えます。

当然私も。

この項続く

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